夏の光と遊びの空間


夏は水が光って見える。

私は暑さと日差しがとにかく苦手なのですが、それでも太陽が眩しいこの時期ならではの水の姿の良さがあって、それを感じる時ばかりは「夏もいいな」と思います。

写真は発達支援を行っている施設で設定した遊び環境の一コマで、日除けの下に吊るしている色水は染料で色をつけたものです。

染料は水に溶け込む着色剤なので、顔料ベースの絵の具と違って、透明度の高い色水を作ることができます。

食用色素(食紅)でも同様の色水ができますが、凧絵染料(凧に絵付けする粉末染料)はさらに発色がよくて鮮やかです(※1)

周りの風景を透かして輝く姿は華やかで涼しげで、しばし暑さと喧騒を忘れさせる引力があるようです。これを目にするとみんな「わあ!」と目を開いて近寄って来ますから。

ビニール袋に色水を詰めると、思い出す空間があります。かつて見た元永定正さんのインスタレーション。

元永さんは『ころころころ』や『もこもこもこ』の絵本で知られる美術作家さんで、もともと前衛美術家として活躍していた方でした(2011年にお亡くなりです)。

あの展示を練馬の美術館で見たのはいつのことだったっけと、久しぶりに図録を引っ張り出しました。2006年だったんですね(※3)

光を透かす色水と、それが大きなビニールでもったり吊るされていることの危うさ、ユニークさ。

いつもは整然とした美術館の室内が、鮮やかな赤い色を浮かせた空間になっていて驚いたことをはっきり覚えています。ちょうど夏休みの時期で、やって来た小学生くらいの女の子が「あれ作りたい!」と叫んでいました(作りたいよね…)。

屋外の空間では、子どもたちが吊るしておいた色水を手にとって遊びます。

混ぜたり、振ったり、足を浸したり、かけ合ったり、袋ごと投げたり、泡立てたり。

きれいだった色水は、さんざんいじられ、遊ばれて、しまいにはなくなってしまうのですが。

でも水の色味をただただ夏の光に委ねてわけもなく遊んだ夏の空間の彩りは、子どもたちの視界にじんわりと刻み込まれて、大きな声ではしゃぐその体の中に、何かを残していくだろうと思うのです。

※1 凧絵染料はちょっと高価ですが、少量で大量の水を染められます。

通販サイト(Amazon)でも買えます。

※2 どちらも元永定正さん・谷川俊太郎さんの共作で、超ロングセラー絵本です。

『ころころころ』福音館書店、1984年・『もこもこもこ』文研出版、1977年

※3 練馬区立美術館『元永定正の創作の世界』印象社、2006年

『子どもは描きながら世界をつくる』

片岡杏子/ミネルヴァ書房


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『子どもは描きながら世界をつくる

 ​エピソードで読む描画のはじまり

片岡杏子 ミネルヴァ書房

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